心・衣について
絹は、日本の歴史の中で長く産業を支えてきました。
なかでも群馬県の製糸業は、
日本を代表する一大産業として世界へと広がり、
多くの女性たちが働いたことから
「かかあ天下」
という言葉が生まれたとも言われています。
現在も群馬には、
世界遺産となった 富岡製糸場 の歴史が受け継がれ、
国内でも数少ない製糸工場である
碓氷製糸株式会社 が、今なお絹糸を生み出しています。
世界の多くの産業遺産は、
その時代を伝える「遺産」として
残されています。
一方で、
日本の絹文化は、
歴史として保存されるだけではなく、
現在もなお人の手によって受け継がれ、
生き続けています。
皇室でも養蚕が続けられているように、
絹は日本文化の中で今も
大切に守られている存在です。
心・衣では、
日本の成長を支えてきた絹の歴史と、
その土地が育んできた記憶を、
癒しの時間とともに
感じていただきたいと考えています。
何百年もの間、
人々を癒し続けてきた伊香保の温泉文化とともに、
この場所でしか出会えない時間を、
お持ち帰りいただけたら幸いです。
染色では一般的に、
アルミや鉄、銅、チタンなどの媒染剤を用いて、
色を引き出し、
定着させます。
そんな中で、
私たちが注目したのが「温泉」でした。
温泉にはさまざまなミネラルが含まれています。
もし温泉を媒染として使ったら、
今まで見たことのない色が生まれるのではないか。
始まりは、とても小さな興味でした。
ほんの好奇心から試したことが、
すべての始まりです。
伊香保温泉の黄金の湯は、
マグネシウム、カルシウム、鉄分などを
豊富に含む泉質です。
その成分が植物の色と重なり合うことで、
伊香保でしか生まれない
色が現れます。
それは、
どこかで再現された色ではなく、
土地そのものが持つ色。
その土地の記憶を、
絹糸へ映していく。
心・衣では、
その手しごとを、
ご自身の手で味わっていただけます。
私たちの身のまわりにある多くの製品は、
効率よく大量に作られる時代の中で生まれています。
便利になった一方で、
その過程が自然環境へ与える影響も、
少しずつ見つめ直されるようになってきました。
私たちにできることは、
決して大きなことではないかもしれません。
心・衣の工房には下水がありません。
使った水は浸透枡を通り、
その土地へと還っていきます。
だからこそ、
洗剤や日々使うものも、
できる限り自然にやさしいものを
選びたいと考えています。
草木染めは、
自然の色を借りて、
新しい色を生み出す手しごとです。
自然からいただいたものを、
また自然へ還していく。
未来の地球に
負担を少しでも残さないこと。
それも、心・衣が
草木染めを選ぶ理由のひとつです。
みなさまと、自然と、
人にやさしい時間を過ごせることを
願っています。
私たちは日々、
多くのものに囲まれて暮らしています。
便利になり、
たくさんのものが手に入る時代になりました。
そんな中で、
心・衣が大切にしているのは
「量産しない」という選択です。
手で作るものには、
一つとして同じものがありません。
その日の気温や自然の色、
手を動かす人の感覚によって、
少しずつ表情が変わっていきます。
伊香保の湯が育てた色を映し、
一段ずつ糸を織り重ねていく。
その作業は、
急ぐ時間ではなく、
ただ目の前のことに向き合う
穏やかな時間です。
自然を感じ、
手を動かし、
自分だけの時間を過ごす。
それは、
何かを「作る」こと以上に、
自分自身を取り戻していく時間
なのかもしれません。
慌ただしい日常から少し離れて、
静かに自分と向き合う。
その土地の思い出とともに、
自分だけのひとつを
持ち帰っていただけたら嬉しく思います。
心・衣で使用している機織り機は、
京都手織研究所が制作している
「フラミンゴ」という機織り機です。
昔ながらの大きな機織り機とは少し違い、
糸掛けから機織りまで、
比較的やさしく取り組めるよう設計されています。
なぜ、この機織り機を選んだのか。
それは、
「誰でも織ることができる」
という考え方に共感したからです。
フラミンゴ機は、
もともと障害者就労支援のために作られた機織り機で、
座ったままでも
糸掛けから機織り終わるまでの作業を
行うことができます。
心・衣では、
年齢や経験に関わらず、
どなたでも手を動かし、
ものづくりを楽しめる場所を目指しています。
工房は玄関に多少の段差はあるものの、
廊下から部屋までは
段差の少ないつくりとなっており、
床もクッションフロアでつながっています。
ドア幅は約80cmあり、
車椅子の方でもお入りいただける形になっています。
必要に応じて、
キャスター付きの椅子も
ご用意しております。
日々の楽しみのひとつとして、
気軽に遊びに来ていただけましたら
嬉しく思います。
山の静けさ
没頭する時間
学びの時間
糸の肌触りを味わう
季節を感じる
山のめぐみ
蚕と自然の恵み